ACTS2021 Carryber成果報告!

ACTS2021 Carryberチームリーダーの前川です!年度が替わり新たなチームが始動する時期ですが,昨年度の結果報告を致します!報告が遅くなり申し訳ありません.

Carryberの概要

2021年度のチームCarryberでは「物体検出×把持アーム機構による自律運搬CanSat」というミッションに取り組みました.将来の惑星探査において,月面基地の建設など惑星上での物資の運搬は欠かせない作業です.人間にとっては危険と隣り合わせである船外における活動のサポートをするためにも,CanSat自身が運搬物を認識し,人の手を介することなく自らの力のみで運搬を完遂できることが必要になります.

そこで,我々はカメラを用いた物体検出と,運搬物を把持するアーム機構を取り付け,手(アーム)を持ち,ものを認識できるCanSatの開発を目指しました.

特に,物体検出ではサイズの小さな物体に対しても検知可能なモデルおよび接近動作の構築,アーム機構では物体の形状に依存しない把持性能を持つ機構を開発しました.

①物体検知:ゴールコーンを色により判断するカメラ検知は高玉研究室でも用いられていましたが,今回は小さい運搬物も遠くから検知するために深層学習による物体検知手法を用いました.モデルを学習させる際に多様な環境に対応できるように,部分的に物体が隠れている場合や,光によって色が変化した場合にも対応できるような物体検知モデルを構築しました.また,物体の検知状況に応じて複数の接近動作を切り替えることで物体への接近効率を高めています.

②アーム機構:投下可能なCanSatの制限内で運搬物の把持性能を上げるために,折り畳み式+構造の異なる左右のアームがついています.左アームはスポンジの反発力で把持力の強化をし,右アームはバネによって物体表面にアームをフィットさせています.

また,運搬というミッションを掲げる上で,運搬を完遂することは前提条件ではありますが,何らかの外的要因によってCanSatが把持中の物体がアームから離れて運搬物をロストしてしまうことが考えられます.そこで,運搬中に運搬物のロスト判定をすることでロスト検知をし,ロスト判定時には再度物資探索をすることで確実な物資運搬を目指しました.

・ロスト検知:運搬中は運搬物がカメラに常に映るため,CanSatは物体検知をし続けることで運搬物を把持しているかどうかを判定しています.カメラから運搬物が消えた場合にはロスト検知とし,再度物体検知からの運搬をし直します.

Carryberの結果

大会の結果,Carryberチームは今年度の受賞はできず,残念な結果となってしまいました….
要因としては本番で本ミッションの運搬を完遂できなかったこと,発表でミッションの意義を伝えきることができなかったことにあると考えています.

  • 1st flight
  • 投下1日目では投下後,パラシュート切り離しに失敗し,CanSatが草にスタック,タイヤが空転することで進めずにリタイアとなりました.この原因は普段と違う環境下におけるパラシュート取付時の人的要因であったため,この点に注意し,現地に合わせた脱出動作を組み込み2nd flightに臨みました.

  • 2nd flight
  • 投下2日目では投下・パラシュート切り離しに成功し,運搬物付近に到着後,運搬物を探索するもミッション時間15分以内に運搬物を収集することができず,時間切れとなってしまいました.競技時間終了後は時間経過によるフェイルセーフ機能により運搬よりもゴールを優先し,競技時間外ではあるもののゴールコーンに密着した0mゴールを達成することができました.この原因としては,①運搬物の誤検知,②フェイルセーフの設定の甘さの2点にありました.
    ①:物体検知中に人込みを運搬物と検知してしまいました.CanSatには3回目標を検知すると運搬物が近くにあるとみなし,その場での回転を続けるアルゴリズムが組み込まれており,このアルゴリズムが対象物体でない人混みにたいして発動してしまったことから,運搬物からある程度離れた距離で近距離探索用の探索に移行してしまったため運搬物が発見不可となり時間切れとなってしまいました.誤検知を考慮したアルゴリズムの設計が足りていませんでした.
    ②:①で運搬が難しい状態となった際に時間によりフェイルセーフが発動し,ゴールへと向かうアルゴリズム設計となっていましたが,この設定が競技時間に対して長かったためゴールする頃には競技時間終了となってしまいました.時間設定が短すぎると探索がうまくできない可能性があるためこの設定は短い競技時間ではかなりシビアでしたが,探索を優先した今回の設定が裏目に出てしまう結果となりました.

    非常に残念な結果となりましたが,1st flightの失敗を踏まえて悪路に合わせたスタック脱出動作を2nd flightの投下前に組み込んだところ,深い草むらに対して有効に脱出機構が発動しゴールまで到達できたため,この点は現地での調整を重ねた甲斐がありました.遅くまで調整をしてくれてソフト班をはじめとした皆さんには感謝です!

    2022年度は2021年度の失敗の反省と成功体験の両方を生かして開発に臨みましょう!