ACTS(ARLISS2020代替大会)結果報告 SolaMilチーム

 

あけましておめでとうございます.SolaMilチーム,リーダー兼回路担当の河野です.

 

今年度のACTS(ARLISS2020代替大会)では,「GPSや地磁気の情報を使うことなく太陽光を観測することでゴール地点を目指す」というミッションに取り組みました.具体的には,ローバーに搭載した方位推定機構によって太陽光から太陽の方向を観測し,そこから推定されるローバーの進行方向がゴール地点に向かうように制御します.このナビゲーション手法は,光源の情報さえ既知であれば,人工衛星からの位置情報や地磁気センサによる方位情報が利用できない宇宙環境でも使用可能です.

 

このミッションでは主に以下の内容が要求されます.

  • 方位推定機構の選定

 太陽の方向を観測する手法や機構はいくつかありますが,ARLISSや今回参加したACTSでは上空から落とした時の着地衝撃などによって破損することのない丈夫さが必要であり,さらにこれを搭載したローバーの重さやサイズが大会レギュレーションに収まるように小型かつ軽量である必要があります.私たちは光が当たると電位差が生じるというLEDの性質に着目し,グリッド上に配置したLEDの上に遮光カバーを被せたLEDマトリクスセンサを作成しました.また,このセンサを新たに回路基板に追加するうえで多くの面積を占めることや,他のセンサやローバのタイヤなどの影によって太陽光の観測に影響を与えないようにする必要がありましたが,回路班が何度も回路部品の配置を検討することで解決してくれました.

  • 太陽方向の観測とローバーの進行方向推定の正確さ

 このミッションではローバーから見て太陽がどの方向にあるのかを正確に観測し,そこからローバーの進行方向を推定する必要があります.今回私たちは4×4のグリッド上に配置したLEDに生じた電位差から太陽方向を観測していますが,これを正確に捉えることにはとても苦労しました.主に工夫した点の1つは,環境による反射光の除去です.白い建物などによって反射された光が多方向からLEDマトリクスセンサに当たると,太陽の方向を推定できなくなってしまう問題がありました.これに対応するために遮光カバーに取り付ける遮光板の枚数を調整するなど試行錯誤しました.また,4×4のLEDの情報から細かな角度まで算出する工夫として,それぞれの電位差の値からグリッド上における太陽光の重心を計算しています.このミッションの根幹を担う重要な部分でしたが,ソフト班が中心となって真摯に取り組んだことで乗り切れました.

  • 稼働可能時間・条件による制限

 今回のローバーは太陽光を観測して走行するため,太陽の出ている時間しかゴールに向かって走行することができません.そのため,大会当日はもちろん大会までの実験までもが日が沈むまでという時間的な制限がありました.今年度はARLISS中止に伴い代替大会のACTSの開催が12月と冬の時期であったため,太陽が出ている時間も短い中で大会までの実験をすることなりました.また,雨の日はもちろん曇りの日も曇りの程度によっては実験が難しい場合もあり,今年度のACTSに向けた活動はこれらの制約との闘いでもありました.

 

ACTS結果報告

 

ACTSにおいてなんと「総合優勝」することができました!

また,2回目の投下でローバーがゴールとの距離26.05mを達成し,「Accuracy Award 第3位」を受賞しました!

COVID-19の流行により私たちを含め多くの団体が思うように活動できない状況ではありましたが,それを感じさせないハイレベルな大会でした.

その大会でこのような評価をいただいたことがとても誇らしいです.

 

以下,それぞれの投下結果です.

  • 投下1回目

記録60.20m

    • 着地後にパラシュート切り離しまでは成功しました.
    • 走行開始直後に土山にスタックし,一度は抜け出したものの再び別の土山にスタックしてしましました.そのまま抜け出すことができず,制限時間15分を迎えリタイアとなりました.

  • 投下2回目

記録26.05m(Accuracy Award 第3位)

    • 着地後,パラシュートとの切り離しは成功したものの,パラシュートが機体に絡まったまま走行を始めました.
    • 走行の途中でパラシュートと機体が分離し,ゴール方向へ走行を再開しました.
    • ローバーはゴールから26.05mの地点でゴールと判定し制御を終了しました.

  • (おまけ)投下直前のナビゲーションの様子

ACTSの投下直前のナビゲーションの様子です.ゴール地点近くでピタリと制御を終え,チーム全員で興奮したのを今でも覚えています.

最後に

4月から約8か月にわたる長い長い闘いでした.太陽の光だけで制御するという挑戦的なミッションにおいてハード,ソフト,回路それぞれとても多くの課題を抱えた中でのスタートだったと思います.チームメンバそれぞれが意見を出し合い試行錯誤しながら協力して一つ一つ課題をクリアしていく姿勢は本当に頼もしく思いました.おそらく私の見えていない部分でも相当な努力があるものと思います.COVID-19の流行のなか,モチベーションを維持することも大変でしたが,このチームで活動できたことをとても誇りに思います.また,ご指導いただいた高玉先生や一緒に活動してきたチームHopesの存在なしではこのような結果は達成できなかったと思います.本当にありがとうございました.次回はアメリカのARLISSで走るローバーを見られるといいですね.